文字の起源と歴史 
ヒエログリフ・アルファベット・漢字 

アンドルー・ロビンソン 
片山陽子 訳 
創元社 
2006年 

著者は本書出版時点で言語学等の正規の研究者ではなく、その意味ではアマチュアである。にもかかわらず、極めて詳しい内容であり驚いた。英文ウキペディアによれば、著作はたくさんあるものの、教授職等には一切ついておらず、完全にフリーの著作家で、理論物理関係の著作も多い。
本書の原題は、The Story of Writing: Alphabets, Hieroglyphs and Pictograms. (1995)

p25 
文字の起源 
文字の使用が会計から始まったことは、今日では大方の学者が認めている。ただし、古代エジプトや中国や中央アメリカの残存する文書には、会計を記したものはあまり見当たらない。
紀元前3000年代の終わ頃、メソポタミアの都市において商取引や管理が複雑になり、ヒトの記憶だけでは対処しきれない段階に達したということだ。

p26 
エジプトでは紀元前3100年、インダス文明では紀元前2500年、クレタ島では紀元前1900年、中国では紀元前1200年、中央アメリカでは紀元前600年頃、それぞれ最古の文字が書かれている。

グーグルAIによれば、中央アメリカを除いて概ね正しい。中央アメリカでは、紀元前300-200年とグーグルAIは返答してくる。

p195 
文字の起源は多くの謎に包まれている。中でも一番分からないのはアルファベットの始まりなのだ。アルファベットが古代ギリシャを経由して現代に持たされたことはよく知られているが、ギリシャにいつどんな風にして現れたのかははっきりしない。

p199 
紀元前14世紀にはアルファベットが出来ていたという確かな証拠がシリアの北海岸にあるウガリット(現在のラス・シャムラ)で発見されている

p209
地中海沿岸のどこかで発生したアルファベットの原理による表記法は、西はギリシャ語経由で現代のヨーロッパへ広がり、東は多分アラム語経由でインドへと達した。今日では帝国による植民地支配の結果として、中国人と日本人を除いたほとんどの民族がアルファベットを使っている。大半のアルファベットは20~30の基本的な記号で構成され、もっとも少ないのがソロモン諸島のロトカス語の11文字、最も多いのがカンプチアのクメール文字の74字である

グーグルAIで調べるとロトカス語の11文字は英語のアルファベットと全く同じである

p253 
ではなぜ日本語は全面的にかな書きだけに転向しないのだろうか。
日本語には同音異義語がけた違いに多い。右に挙げた漢語(中国から借り入れて日本語になった語)はすべて「かんしょう」と発音されるが、意味はそれぞれ全く違う
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p254【日本語について】
世界でもっとも複雑な表記法