中国社会の見えない掟
潜規則とは何か

加藤隆則
講談社現代新書
2011年

本書刊行時に読売新聞の中国総局長であった者による興味深い著作であり、中国史マニアの私としては、「さもありなん!」という印象であった。現代中国の強い拝金主義は、長い中国史においても表面上は異例の状態であるように感ずる。
人相食 で中国正史を検索すると非常に多い、しかも、死者を食すのではなく、殺して食すのである。現代中国では、「社会的に殺す」現象が多数見られる。

p13
中国で「潜規則(隠れた規則)」という言葉が使われ始めたのは2001年
ジャーナリストの呉思が
【この者が、潜規則をタイトルとする書籍を出版してから使われ始めたそうである。】

p14
「潜規則」を日本語に直訳すれば「不文律」「暗黙の了解」となるが、
「潜規則」は批判精神を背負った言葉である。

p33
共産党による建国後は儒教文化が否定され、伝統的な道徳観念は著しく破壊された。
改革・開放後は、拝金主義が蔓延し、道徳の荒廃はさらに深刻化した。

p91
年間数千件もの死刑執行
【著者によれば中国の死刑執行数は公表されていないとのこと。日本に比べ人口比でみても極めて多い。また、著者は冤罪例を記述している。】

p102
2006年
衛生省によると中国では同年、一万一千の臓器移植が行われ、9割以上が死刑囚からの提供だった。

これが正しいのであれば、中国の2006年の死刑執行数の実際の数はは、1万件に近いことになる。

p111
日本とは異なる贈収賄事件の構造
中国のベテラン記者 
次のように解説してくれた。
「権力者は贈賄業者を迂回させて土地や国有企業の財産を流用し、それを仲間に分配して利益共同体を形成する。分配を拒否すれば身の危険につながる。業者は自身の取り分にあずかりながら、大半の利益を官に還元する役割りを演じているに過ぎない。だから、汚職事件を取材するときは、必ず黒幕が誰なのかを見る。これを間違えると記者の身も危ない」
中国では権利をバックとする利益共同体が国有財産を私物化して分配するために、民間業者を利権の運び役として利用する。

p149
中国では教師を「老師」と呼んで聖職視する伝統的価値観が強い。

p171
公徳は、市場経済化によって拝金主義が蔓延り、道徳感の崩壊が叫ばれようになって以来、頻繁に登場するようになった言葉だ。

p183
しばしば驚かされるのは、中国では血縁関係も法的関係もない父母、兄弟が多数いることだ。
兄弟のちぎりを結ぶことは、「結拝」「結義」と言う。
親子の契りを結んで、儀式を執り行うこともある。この親は義父、義母。配偶者の父母を岳父、岳母と呼ぶのとは区別される。

p187
中国人と友人関係を築くと、どんな困難もないと思えるほど、たいていのことは犠牲にして助けてくれる。

p188
これが面子、人情に縛られた権利社会の実情である。
人間関係を重んじる中国社会の特徴を前向きに捉え、楽感文化と評する見方がある。

p209
建国後、メディアの言論が最も自由であった1980年代後半

p210
中国で一般庶民を総称する言葉は百姓である。