天才 genius 
イェール大学人講義
その隠れた習慣を解き明かす

クレイグ・ライト
南沢 篤花 訳

すばる舎
2022年

日本と異なりアメリカの大学の教授職は①学生に人気のある講義をする②評価の高い学術誌の論文掲載数が多い のどちらかでないと、各分野の大家を除き教授であり続けることは出来ない。本書は、皮肉として①によって何とか教授職を維持し続けた者による「いかにして講義の学生人気を高まめるのか?」の典型例であり、中身は薄いように思えた。

p18 
【著者自身について】私はクラシックピアノを学んだが、作曲することも、演奏家として生計を立てることもできずに
クラシック音楽史の授業を受け持ち、その研究者になった。いわゆる音楽学者である

p19 
大半の学生はどうすれば天才になれるのかを知りたがっていた

この記述には驚愕した。もしも、記述が真実なら少なくとも全米5位の大学であるイェール大学の学部学生の知的水準は信じがたいほどに低いということになってしまう。

しかし、それ以上に本書で取り上げている人物には天才以外の単なる有名人も多く含まれている、従って、「大半の学生はどうすれば自分がアメリカで有名人になれるのか?(=事実上は金持ちになれるのか?)を知りたがっていた」というのが正しいであろう。

厳しい競争社会であるアメリカで生き抜くには、有名人になることがmake moneyの近道であり、一旦金儲けに成功すればよいと考える学生が少なくともイェール大学には多いことを意味する。不思議なことに拝金主義
=「金が全て」が蔓延しているのは世界的に見ても中国とアメリカであることは間違いない。(ただし、1990年頃まで中国には拝金主義はなかった。ここ30年程の現象に過ぎない)二つの拝金主義国家の対立は人類を滅ぼすのかもしれない。

p63 
今日多くの専門家が、科学分野での秀でるのに必要な知能指数は、IQ115~125あればよいと考えている。それを超えると、IQのスコアが上がっても、創造的な洞察力との関連性がほとんどなくなる(注)63

(注)63には3つの著作が記述根拠である旨明記。しかし、ここでいうIQの内容は不明である。簡単な図形認識等ウェブ上のIQテストはほぼ意味がないが、恐らくはそのタイプのIQテストを指しているのであろう。

p95 
本当に天才には性差があるのだろうか
サイモントンは、天才と見做せる女性一人につき男性は10人を超えると主張している(注)あり

p210 
天才と狂気 
ゴッホが自分の耳を切り落とした事件はよく知られており

p226 
ベートーヴェン 
彼は、双極性障害、妄想症、長期にわたる消化器疾患、鉛中毒を患っており、高機能アルコール障害でもあった(注)あり