図表と地図で知る
ヒトラー政権下のドイツ

クラス・マグナブ
松尾 恭子 訳
原書房
2011年

原題は第三帝国であり、著者は現代史やナチス研究者ではなく、単なる作家、編集者である。
しかし、それだけに他者と異なる視点から、ナチスに関する様々なデータを提供している。データ好きな私にはピッタリの著作である。明らかなDNA異常民族の国では、旭日旗をナチスの旗と同一視するのが一般的である。「我々は優秀な民族」は、下のデータを見て、どのように屁理屈をこねるであろうか?大爆笑🤣😆

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p73
第三章 経済
ヒトラーは多くの国民から支持されていた。その理由のひとつは、ヒトラーがドイツの経済を復活させたからだ。ヒトラーが政権に就いた1933年1月
失業者の数は600万人に達していた。しかし、それから6年後、その数は30万2000人にまで減少した。
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このことを知っていたが、数値は忘れていた。アメリカが大不況から完全に回復したのは、第二次世界大戦参戦後であることも意外に知られていない。

p78
ドイツは資源に乏しいため、自給自足を実現するためには充分な資源を生み出す土地を獲得する必要があった。つまり、生存圏を拡大しなければならなかった。

p82
ドイツは1939年に軍事侵攻に踏み切るが、それを決断するに至ったのは、財政上の理由もあったのではなかろうか。戦争は、財政赤字を解消するための一つの手立てであるからだ。

第四章 政権と指導者
p112
ナチス政権下のドイツの統治体制は複雑である。というのも、国家組織と並んで、ナチスの党組織が統治機構として機能していたからだ。両者の間には軋轢が生まれ、それが解消されることはなかった。

p115
ドイツの人口は1939年の時点で8000万人だったから、
党員数は割合少なかったとも言える。
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第六章国防軍
p182
1939年から1945年にかけて、陸軍兵士として戦争に参加した男子は1600万人である。そのうち300万人が死亡した。
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東部戦線における死傷者数に驚かされる。ほぼ、日本の全体の動員兵力数と同じである。
第二次世界大戦の日本の民間人を含む全体の死者は、約310万人であり、ドイツの状況の怖さを実感する。

p189
馬車を使用する兵站は、陸軍の弱点でもあった。1941年から始まるバルバロッサ作戦では兵站部隊は75万頭の馬を使用したが、その馬の餌の調達と世話が重い負担となった。

p211
ドイツ軍は各戦線において多くの兵士を失った。ポーランドでは1万3000人、フランスでは4万3000人、イタリアでは6万人、北西ヨーロッパでは12万8000人の兵士が戦死した。東部戦線では200万人からの兵士が命を落とした。

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ナチスドイツの兵隊手帳に掲載されていた兵士の心得10ヶ条には、日本の軍人勅諭や戦陣訓と比較して驚いた。ドイツ語原文は、このページに掲載されている。
兵隊手帳は全員が所持していたはずであり、少なくとも、表面上はナチスは極めて正常な軍隊であったはずである。本書における最大無二の収穫であり、驚いた。確かに、第二次世界大戦及び戦闘終了後のドイツ・フィンランド・満州等々でのソ連兵のレイプはあまりにも有名である。しかし、ソ連兵はレイプのみで殺害することは無かった。これに対して、中国戦線では、レイプ後に殺害したという兵士の証言も存在する。ただし、証言に多少の誇張があったことを後で認める証言者もいる。以下の翻訳は機械翻訳である。それにしても、怖いほど良くできている内容。

Die zehn Gebote für die Kriegsführung des deutschen Soldaten
ドイツ兵の戦闘における十戒

1.Der deutsche Soldat kämpft ritterlich für den Sieg seines Volkes. Grausamkeiten und nutzlose Zerstörungen sind seiner unwürdig.
ドイツ兵は自国民の勝利のために騎士道精神をもって戦う。 残酷で無益な破壊は彼にふさわしくない。

2. Der Kämpfer muß uniformiert oder mit einem besonders eingeführten, weithin sichtbaren Abzeichen versehen sein. Kämpfen in Zivilkleidung ohne ein solches Abzeichen ist verboten.
戦闘員は制服を着用するか、特別に定められた視認性の高い記章を掲げなければなりません。そのような記章を掲げずに私服で戦闘することは禁止される。

3. Es darf kein Gegner getötet werden, der sich ergibt, auch nicht der Freischärler und der Spion. Diese erhalten ihre gerechte Strafe durch die Gerichte.
降伏した相手は、たとえ非正規兵やスパイであっても殺してはならない。 これらの者は法廷を通じて正当な罰を受ける。

4. Kriegsgefangene dürfen nicht mißhandelt oder beleidigt werden. Waffen, Pläne und Aufzeichnungen sind abzunehmen. Von ihrer Habe darf sonst nichts weggenommen werden.
捕虜を虐待したり侮辱してはならない。 武器、設計図、記録は取り上げなければならない。 それ以外のものは持ち去られてはならない。

5. Dum-Dum-Geschosse sind verboten. Geschosse dürfen auch nicht in solche umgestaltet werden.
ダムダム弾は禁止です。また、弾丸をダムダム弾に改造することも禁止です。

6. Das Rote Kreuz ist unverletzlich. Verwundete Gegner sind menschlich zu behandeln. Sanitätspersonal und Feldgeistliche dürfen in ihrer ärztlichen bzw. seelsorgerischen Tätigkeit nicht gehindert werden.
赤十字は不可侵である。負傷した敵は人道的に扱われなければならない。医療従事者や聖職者による医療や司牧活動は妨げられてはならない。

7. Die Zivilbevölkerung ist unverletzlich. Der Soldat darf nicht plündern oder mutwillig zerstören. Geschichtliche Denkmäler und Gebäude, die dem Gottesdienst, der Kunst, Wissenschaft oder der Wohltätigkeit dienen, sind besonders zu achten. Natural- und Dienstleistungen von der Bevölkerung dürfen nur auf Befehl von Vorgesetzten gegen Entschädigung beansprucht werden.
民間人は不可侵である。兵士は略奪したり、故意に破壊したりしてはならない。礼拝、芸術、科学、慈善活動に利用される歴史的建造物や建物は、特別な敬意をもって扱われなければならない。民間人からの物資やサービスの提供は、上官の命令によってのみ請求し、補償することができる。

8. Neutrales Gebiet darf weder durch Betreten oder Überfliegen noch durch Beschießen in die Kriegshandlungen einbezogen werden.
中立地域は、侵入、上空飛行、砲撃によって敵対行為に巻き込まれることはない。

9. Gerät ein deutscher Soldat in Gefangenschaft, so muß er auf Befragen seinen Namen und Dienstgrad angeben. Unter keinen Umständen darf er über Zugehörigkeit zu seinem Truppenteil und über militärische, politische und wirtschaftliche Verhältnisse auf der deutschen Seite aussagen. Weder durch Versprechungen noch durch Drohungen darf er sich dazu verleiten lassen.
ドイツ兵が捕虜になった場合、尋問の際に氏名と階級を告げなければならない。いかなる状況においても、所属部隊に関する情報、あるいはドイツ側の軍事的、政治的、経済的状況に関する情報を漏らしてはならない。また、約束や脅迫によって漏らしてはならない。

10. Zuwiderhandlungen gegen die vorstehenden Befehle in Dienstsachen sind strafbar. Verstöße des Feindes gegen die unter 1-8 angeführten Grundsätze sind zu melden. Vergeltungsmaßregeln sind nur auf Befehl der höheren Truppenführung
上記の命令に公務上違反した場合は処罰される。敵が1~8に列挙された原則に違反した場合は報告しなければならない。報復措置は上級司令官の命令がある場合にのみ認められる。


第七章民族政策
p223
大量殺害を行うことだけを目的とするいわゆる絶滅収容所
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この図は知らなかった。今更ながら、日本が完全に分割占領されなかったことの重大さが実感される。
ただし、形式上は同様に分割占領であり、記憶では関西はイギリス担当だったはずだある。
ポーランドはその後占領地区を自国領土とし、カントが住んだケーニヒルスベルクも今はロシアの飛地にある。また、その過程でポーランド統治地区から1500万人程度のドイツ人が西へ移動した。


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