シン・中国人
激変する社会と悩める若者たち
斎藤 淳子
ちくま新書
2023年
p13
これまでの我々が知る中国人では掴みきれないタイプの人々の出現だ。
本書は シン・中国人と名付け、
p18
世界で100年近くかけてじっくり到達した経済・社会・文化の発展を改革開放後のたったの数十年で実現したのだから
1984年には沿岸14都市の対外開放を断行し、高度成長の時代に突入した
p19
衝撃的な変化が中国では四十数年前に起きたばかりなのだ。
これを境に中国ではすべてがひっくり返った
p21
急速に時代が流れた中国の親子間には他国の数世代分の時間が圧縮されている。
中国の親子間では金銭感覚、娯楽感覚、美意識から恋愛観に至るまでありゅる領域の感覚に巨大なギャップがある
p35
北京や上海など大都市での「戸籍」は地方出身者にとって、大都市での正規住民としての権利を意味する。国際的に例えるなら、先進国の永住権に近い貴重な存在だ
p43
【日本の東京でへは自由に戸籍を移動できることを紹介した後】彼らがまず言うのは、「中国でそんなことをしたら皆が都市の押し寄せて大都市がパンクしてしまう」ということだ。「だから戸籍を制限するのも仕方がない」というのが中国の人の大体一致した見方だ
p62
合計特殊出生率
2020年には1.30に激減した
中国では独自の要因が存在する中で他国には前例のない時間を圧縮する形で超特急の近代化が起きている
p69
2021年
学習塾禁止令
p136
王さん
「結納金は今年帰ったら18万元(約360万円)になっていた」
王さんが結婚した20年前の結納金は400元だったというから
p141
辺鄙で貧困な地域ほど結納金が高騰している
p146
中国の都市部の女性は学歴も高く日本の女性以上に家庭内の地位も高い一方で
近年になって農村の結納金を高騰させた要因はやはり中国の一人っ子政策の影響が大きい
p149
女児の出生数100として男児の出生数、1989年=114、1994年=116、1999年=121、2004=123
1996年~2015年生まれの間で大きく男女バランスが崩れているのがわかる
中国の一人っ子政策は、1979年に開始され、2015年10月に廃止が発表され、2016年から正式に施行である。恐らくは、妊娠期における男女判定の普及が、男女人口比バランスの崩れを招いた最大要因と思われる。
p151
中国中央テレビのドキュメンタリー番組で、山東省でも村の誰かが結婚するという話が出ると、まずみんなが最初に聞くのは「いくらで買ったんだ?」という質問だと紹介している。
狭い農村社会中で誰の結納金が多かったという「メンツ競争心理」に火が付き、それが結納金の高騰を招いているという
p161
現在全国の人々が常識と思っている「結婚するなら、男が家を準備するもの」というルールは、いつ、どうやって生まれたのだろうか?
p162
【都市部でも結婚後に住む住宅は就業先が用意する制度であったことに触れた後、1998年に】個人が住宅の70年間の使用権を買い取り、自分の私有財産と位置づけたのは、この98年の改革以降の話だ
p167
中国では日本のように大多数の若夫婦が借家を利用する道は開かれなかった
著者は、借家人が借家契約期間中であるにもかかわらず大家の悪辣な手段で追い出された例を紹介している。
p243
中国の過去二十数年の変化は世界がいまだに経験したことのない圧縮型の超高速発展だった。
激変する社会と悩める若者たち
斎藤 淳子
ちくま新書
2023年
社会人類学の著作ではないものの、非常に優れた著作であり、中国在住歴が長いからこそ書けた内容である。
本書で初めて気付かされたのは、中国社会の変化スピードの極度の早さである。反面、中国史マニアの私の目には、著者の中国人への視線は極めて甘いように感じられた。中国人の極度の怜悧さに、著者も充分に気づいているはずである。
1950年頃まで、中国では「嫁は貰うものではなく、嫁は買うもの」であったことは絶対に間違いない!著者も多分ご存知のはずである。纒足とは、嫁を買う側から見れば、せっかく買った嫁や妾が逃げることを防ぐことが出来る好都合なものであった。嫁を売る側から見れば、娘の纒足即ち、走ることが出来ない小さな足の方が娘を高く売ることができることを意味する。そして、離婚した場合、江戸~昭和初期時代の日本と全く異なり、実家に戻ることはあり得ず、嫁ぎ先に留まるか、又は、嫁ぎ先によって、再度売られた。
従って、中国農村部での結納金の高騰は単に、人工妊娠中絶の影響による男女人口比バランスの崩れによって、事実上、嫁の価格が高騰しているに過ぎない。私は少なくとも、著者の方よりも中国史に詳しいはずである。
古代文明が栄えた地は、今日、中国以外は全て、先進諸国と比較すれば、経済的・社会的・政治的に見て極めて悲惨な状態である。中国のみが、古代文明以来一貫して、見かけ上繁栄又は強国であり続けた。その根本理由は、著者が指摘した中国社会の変化速度の早さ、言い換えれば、社会全体があたかも軟体動物のような極度の柔軟性にあるのかもしれない。著者は、あえて書いていないが、年老いた親の面倒は子が見るという中国古来の共通認識は本書でも堅持されているようである。日本との決定的な差であり、この共通認識こそが現代中国人と中国を見る際のキーとなる。毛沢東がぶち壊そうとした儒教の影響とみるかどうかは難しい。
本書で初めて気付かされたのは、中国社会の変化スピードの極度の早さである。反面、中国史マニアの私の目には、著者の中国人への視線は極めて甘いように感じられた。中国人の極度の怜悧さに、著者も充分に気づいているはずである。
1950年頃まで、中国では「嫁は貰うものではなく、嫁は買うもの」であったことは絶対に間違いない!著者も多分ご存知のはずである。纒足とは、嫁を買う側から見れば、せっかく買った嫁や妾が逃げることを防ぐことが出来る好都合なものであった。嫁を売る側から見れば、娘の纒足即ち、走ることが出来ない小さな足の方が娘を高く売ることができることを意味する。そして、離婚した場合、江戸~昭和初期時代の日本と全く異なり、実家に戻ることはあり得ず、嫁ぎ先に留まるか、又は、嫁ぎ先によって、再度売られた。
従って、中国農村部での結納金の高騰は単に、人工妊娠中絶の影響による男女人口比バランスの崩れによって、事実上、嫁の価格が高騰しているに過ぎない。私は少なくとも、著者の方よりも中国史に詳しいはずである。
古代文明が栄えた地は、今日、中国以外は全て、先進諸国と比較すれば、経済的・社会的・政治的に見て極めて悲惨な状態である。中国のみが、古代文明以来一貫して、見かけ上繁栄又は強国であり続けた。その根本理由は、著者が指摘した中国社会の変化速度の早さ、言い換えれば、社会全体があたかも軟体動物のような極度の柔軟性にあるのかもしれない。著者は、あえて書いていないが、年老いた親の面倒は子が見るという中国古来の共通認識は本書でも堅持されているようである。日本との決定的な差であり、この共通認識こそが現代中国人と中国を見る際のキーとなる。毛沢東がぶち壊そうとした儒教の影響とみるかどうかは難しい。
p13
これまでの我々が知る中国人では掴みきれないタイプの人々の出現だ。
本書は シン・中国人と名付け、
p18
世界で100年近くかけてじっくり到達した経済・社会・文化の発展を改革開放後のたったの数十年で実現したのだから
1984年には沿岸14都市の対外開放を断行し、高度成長の時代に突入した
p19
衝撃的な変化が中国では四十数年前に起きたばかりなのだ。
これを境に中国ではすべてがひっくり返った
p21
急速に時代が流れた中国の親子間には他国の数世代分の時間が圧縮されている。
中国の親子間では金銭感覚、娯楽感覚、美意識から恋愛観に至るまでありゅる領域の感覚に巨大なギャップがある
p35
北京や上海など大都市での「戸籍」は地方出身者にとって、大都市での正規住民としての権利を意味する。国際的に例えるなら、先進国の永住権に近い貴重な存在だ
p43
【日本の東京でへは自由に戸籍を移動できることを紹介した後】彼らがまず言うのは、「中国でそんなことをしたら皆が都市の押し寄せて大都市がパンクしてしまう」ということだ。「だから戸籍を制限するのも仕方がない」というのが中国の人の大体一致した見方だ
p62
合計特殊出生率
2020年には1.30に激減した
中国では独自の要因が存在する中で他国には前例のない時間を圧縮する形で超特急の近代化が起きている
p69
2021年
学習塾禁止令
p136
王さん
「結納金は今年帰ったら18万元(約360万円)になっていた」
王さんが結婚した20年前の結納金は400元だったというから
p141
辺鄙で貧困な地域ほど結納金が高騰している
p146
中国の都市部の女性は学歴も高く日本の女性以上に家庭内の地位も高い一方で
近年になって農村の結納金を高騰させた要因はやはり中国の一人っ子政策の影響が大きい
p149
女児の出生数100として男児の出生数、1989年=114、1994年=116、1999年=121、2004=123
1996年~2015年生まれの間で大きく男女バランスが崩れているのがわかる
中国の一人っ子政策は、1979年に開始され、2015年10月に廃止が発表され、2016年から正式に施行である。恐らくは、妊娠期における男女判定の普及が、男女人口比バランスの崩れを招いた最大要因と思われる。
p151
中国中央テレビのドキュメンタリー番組で、山東省でも村の誰かが結婚するという話が出ると、まずみんなが最初に聞くのは「いくらで買ったんだ?」という質問だと紹介している。
狭い農村社会中で誰の結納金が多かったという「メンツ競争心理」に火が付き、それが結納金の高騰を招いているという
p161
現在全国の人々が常識と思っている「結婚するなら、男が家を準備するもの」というルールは、いつ、どうやって生まれたのだろうか?
p162
【都市部でも結婚後に住む住宅は就業先が用意する制度であったことに触れた後、1998年に】個人が住宅の70年間の使用権を買い取り、自分の私有財産と位置づけたのは、この98年の改革以降の話だ
p167
中国では日本のように大多数の若夫婦が借家を利用する道は開かれなかった
著者は、借家人が借家契約期間中であるにもかかわらず大家の悪辣な手段で追い出された例を紹介している。
p243
中国の過去二十数年の変化は世界がいまだに経験したことのない圧縮型の超高速発展だった。
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