偉大なる失敗 
マリオ・リヴィオ

千葉 敏生 訳 
早川書房 
2015年

元々は宇宙物理学者であったようだが、事実上はいわゆるサイエンスライターによる「DNAの3重らせん構造=ポーリング」「宇宙定数=アインシュタイン」「静的宇宙=ホイル」等々の例であるが、何故、優れた頭脳を有する者が、ポーリングに代表されるように初歩的な間違いをしたのか?は一切記述されていない。意味があったのは、アーミッシュに関する記述のみである


p50 
アーミッシュの間では、多指症ががアメリカの一般的な集団よりも数倍多い。これは、エリス・ファンクレフェルト症候群という珍しい病の一つの表れである。エリス・ファンクレフェルト症候群のような劣性遺伝病の場合
アーミッシュ・コミュニティでこの遺伝子が通常よりも多く見られるのは、アーミッシュがアーミッシュとしか結婚しないうえに、アーミッシュ集団そのものが200人ほどのスイス系移民に起源をもつからだ。研究者たちは、エリス・ファンクレフェルト症候群の起源を絶った一組の夫婦までさかのぼることができた。1744年に移住してきたサミュエル・キングとその妻だ

集団遺伝学では、一世代を25年から30年としてカウントする。
①280年=10世代とカウントすることになる
②初期人口は200人
③2020年の推定人口は、35万人にも達する=族内婚を前提とすれば、280年=10世代で、人口は1750倍以上に増加したことになる。族内婚だけの増加と前提しても、単純計算ではありうるものの、理論上の近交係数の高さを考えれば、?であり、何らかの疾患の蔓延により人口増加にブレーキがかかるはずである。
④エリス・ファンクレフェルト症候群

中胚葉と外胚葉に異形成をもたらす症候群で、先天性心疾患に加えて、遠位から中間の肢節の短縮を伴う四肢短縮・低身長と歯牙や爪の低形成を有する。別称・軟骨外胚葉異形成症。
常染色体劣性遺伝形式で、4p16に位置するEVC遺伝子、EVC2遺伝子の異常に起因する。
先天性心疾患として約60%に心房中隔欠損や心内膜床欠損を認める。必発する多指症をはじめ、軟骨形成不全による胸郭低形成、肢節短縮と低身長、外反膝、歯牙の低形成あるいは欠損、爪の低形成や粗な毛髪などを認める。

Ellis-van Creveld syndrome, also known as chondroectodermal dysplasia, is a rare genetic disorder characterized by skeletal abnormalities, particularly short-limb dwarfism, polydactyly (extra fingers or toes), and often heart defects. It is often found in high frequency among the Old Order Amish population due to the founder effect.

驚いたことに、エリス・ファンクレフェルト症候群の疾患原因遺伝子であるEVC2遺伝子について、韓国人は、SNV-1が87、SNV-1/ns が1、の韓国人固有の遺伝子変異を有している。SNV-1が比較的多い。

*NCBIで検索してもEVCとEVC2遺伝子しか関連遺伝子として出てこない。

*日本人でもEVC2遺伝子について1個だけ発見されている

神奈川県立こども医療センターを中心とした研究グループは、エリス・ファンクレフェルト症候群の重症度に関わる新しい遺伝子変異を発見したという研究結果を報告しました。

エリス・ファンクレフェルト症候群は、遺伝性(”常染色体劣性遺伝”という形式で遺伝します)の病気で、骨の成長異常(手足や肋骨が短く低身長)、心臓の異常、多指症などが特徴です。この病気の患者さんで変異が見つかった遺伝子として、これまでにEVC遺伝子、EVC2遺伝子、DYNC2LI1遺伝子、GLI1遺伝子、WRD35遺伝子が報告されています。このうち、EVC遺伝子またはEVC2遺伝子の変異は、ほとんどの患者さんで見つかっています。これら2つの遺伝子から作られるタンパク質は、細胞の一次繊毛という部分で働いており、エリス・ファンクレフェルト症候群は、繊毛病のひとつとされています。

この病気は一般的に、新生児のうちに心肺不全を起こしますが、ほとんどの患者さんはこの心肺不全を乗り越えて生きていきます。しかし、重症度が高く、生まれる前に亡くなってしまうケースもあります。今回研究グループは、重症の日本人患者さんの遺伝子を解析し、EVC2遺伝子に、新たな遺伝子変異を見つけました。この変異は、専門的に「c.871-3 C> G」および「c.1991dupA」と表記される変異です。

今後、もっと多くの患者さんで遺伝子解析を進めることで、エリス・ファンクレフェルト症候群の症状や重症度と遺伝子の変異との関連性がはっきりしてくる可能性があります。(遺伝性疾患プラス編集部)