天才の光と影 
ノーベル賞受賞者23人の狂気 
高橋昌一郎

PHP
2024年

通常は、ノーベル賞受賞者の業績=光に焦点を当てるのに対して、汚点に焦点を合わせた出色の書籍であり、多分よく売れるであろう。PHPという私には駄本ばかり出している出版社にしては珍しい。著者は科学哲学を専門としている。ワトソンが強烈に印象に残った

第1章
フリッツ・ハーバー
肥料の原料となるアンモニア合成に成功すると同時に塩素ガス=毒ガス製作=化学兵器

第2章
フィリップ・レーナルト
反ユダヤ主義者であり、アインシュタインの受賞を妨害

第3章
ヨハネス・シュタルク
ナチス信奉者=反ユダヤ主義者

第10章
シュレヂィンガー 
妻妾同居

第13章 
パウリ
なし
p200
微細構造定数を見出した。 
電荷・光速度・プランク定数・円周率の4つによって構成されるが
互いに打ち消しあうため微細構造定数そのものは無次元数

以下は日本語のウキペディア記事から。
因みに、マッハ1も無次元数。L/s÷L/sで両者が打ち消しあう。偏差値も無次元数と呼べる。著者はどうもこの分野に弱いようである。

微細構造定数の値は

電磁相互作用の結合定数として有名な微細構造定数

という無次元量の値をとる




国際量体系 (ISQにおいては、電気定数 ε0磁気定数 μ0、および光速度 c により Z0 = 1/ε0c = μ0c で表されるので、微細構造定数は

となる[5]。 素粒子物理学ではしばしば c = ħ = Z0 = 1 に固定する自然単位系が用いられるので[6][7]

となる


第14章
エガフ・モニス 
ロボトミー手術

第16章
ウイリアム・ショックレー
人種差別主義者で精子バンクに協力

第17章
ワトソン
p268
2000年に惹かれた講演会でワトソンは、肌の色は性欲と関連があると断言して、聴衆を驚かせた。彼の理論によれば、皮膚の色を決定するメラニン抽出物が人間の性欲を高めるため、肌の色が濃ければ濃いほど、性欲が強くなるということになる。

p269 
彼はまた、人種や民族の傾向には遺伝的な根拠があると語り、「ユダヤ人は知性が高い。中国人は知性は高いが、順応性を選択したため創造的ではない。インド人はカースト内部で結婚を繰り返したため卑屈になった」とも述べている。
インタビューを受け「黒人と白人のIQ測定値の相違は遺伝によるものだ」と断言し
ワトソンは自分の発言の目的は「人種差別ではなく科学促進だ」と弁解したが 
彼の名声は地に落ち、友人たちも皆去って行った

p270 
2019年1月、ワトソンは再び人種と遺伝に関する偏見に満ちた見解をテレビドキュメンタリーで述べた

記述根拠は英文ウキペディア記事である
He has also said that stereotypes associated with racial and ethnic groups have a genetic basis: Jews being intelligent, Chinese being intelligent but not creative because of selection for conformity, and Indians being servile because of selection under caste endogamy.
[102]

In January 2019, following the broadcast of a television documentary made the previous year in which he repeated his views about race and genetics, CSHL revoked honorary titles that it had awarded to Watson and cut all remaining ties with him.[126][127][128]


ワトソンの見解は、
①黒人については完全に誤り。ニュートン・アインシュタインクラスのレベルの天才が出現する可能性が最も高いのは高レベル教育を受けた黒人又はその混血の可能性が高い。ただし、1000ゲノムプロジェクトフェーズ3結果発表論文から見て、現生人類が、黒人とそれ以外でかなり異なるのは否定しえない科学的事実である。人類はアフリカだけで誕生し、かつ、アフリカだけで10万年以上暮らしたため、変異の絶対数が、アフリカ420万程度に対し、アフリカ以外350~380万程度と差がある。しかし、アフリカの人々は非同義変異比率が負の自然淘汰にさらされた時間が他の人類よりも10万年も長いため若干低い。

従って、黒人には肉体面ではウサイン・ボルトのようなスーパーアスリート、知能面でもとんでもないレベルの天才が生じる確率が、少なくとも日本人よりは相当程度に高いと思われる。環境要因が同一になれば、確実であろう

②ユダヤ人・中国人については完全に正しい。「順応性を選択」の意味が詳細不明

③インド人については、「卑屈になった」は全く意味不明

④もしも、ワトソンが下記のデータを知り、アメリ食品医薬品局の集団遺伝学論文を読めば、ワトソンは朝鮮人をどのように評したであろうか?ワトソンが、「ぼけ老人」ではなかったことは確実であり、正確にどのように述べたのかを英文ウキペディア記事から調べて見よう

abnormal
私が思うに、朝鮮人とは正常なDNAを有するためには今後1000年はかかる人々である。又は、朝鮮半島の地理的孤立性に助けられて奇跡的に今日まで集団として存続しえた人々である。

何故なら、他の集団に比べて高い非同義変異比率は急速には低下しないからである。ただし、恐らくはベトナム・フィリピンとの混血が急速に進むであろうからして、500年程度で正常に戻る=非同義変異比率が他集団と同じレベルまで低下するかもしれない