民族がわかれば中国がわかる
帝国化する大国の実情

安田峰俊
中公新書ラクレ
2025年

アニメのような装丁とは異なり、正確な記述の多い著作である。本書で初めて知ったが、ウイグル人に対する一般の中国人の印象は必ずしも良くないようである。
著者のような日本の中国通、中国における朝鮮半島関係者は一刻も早く、朝鮮人DNAに関する遺伝的事実を知るべきであろう

p38　
中国共産党は党員が宗教的信仰を持つことを党規約で禁じている

ｐ46　
チベット人の伝統社会において、ポタラ宮に住むダライ・ラマが観音菩薩の化身であるとみなされてきたのに対して、
パンチェン・ラマは、阿弥陀如来の化身とされ、対になる存在である

第三章　ウイグル族
ｐ84　
【ウイグル人】彼らは、20世紀初頭まで自分たちが「ウイグル」だという自覚をほとんど持っていなかった。　
個々人が住むオアシスごとに「トルファン人」、「カシュガル人」とは自称していたが、民族全体を指す呼称は存在しなかった。　
大部分のウイグル人が自分自身をウイグルだと考えるようになるのは、実は中華人民共和国が成立して民族識別工作が行われて以降のことである

ｐ96　
中国の都市住民の間にはウイグル族を犯罪予備軍であるとみなす偏見が根強く存在している

ｐ102　
BBCなど欧米メディアが報じるこうした情報の多くはドイツ出身でアメリカ在住の文化人類学者エイドリアン・ゼンツが2019年以降に発表したレポートに基づいている
新疆問題を伝える国際報道の多くがゼンツの研究という単一の情報源に頼っている点には注意が必要だ

第4章　朝鮮族
ｐ115　
朝鮮族はなんと人口のうち3分の一以上の人たちが海外で暮らしているという中国では他に例を見ない少数民族である

韓国出入国管理局の統計によれば、約85万人の在韓中国人のうち、朝鮮族は約60万にも及ぶ