朝鮮の 「白丁」 身分の歴史的分析

徐知延

上記人物が、学位取得した論文の要旨からさらに抜粋したものだが、白丁は奴婢ではなく売買の対象ではなかったことが確認できる。①白丁は高麗では一般農民を意味していたこと③韓国人どもの区分は明らかにおかしい。奴婢以外の八般私賤とは日本で言う被差別部落民とほぼ同一であろうが、奴婢は売買の対象となった点で決定的に異なる。この論文は、書籍化され出版されている


朝鮮王朝時代 (1392~1910年) の身分制は, 高麗の身分制度を受け継い た制度であり構造的に差はない。 しかし, 高麗時代 (913~1392年) とは 違って庶子の差別がはげしかった。

庶子は, 士族が忌避していた武官に占 有されていて技術官・胥吏につく中人と同様に両班と良人の中間階層であった。

最下層身分の 「賤民」 は, 「七般公賤」 と 「八般私賤」 に分けられてい た。

七般公賤には, 隷 (チョレ), 羅將 (ナジャン), 日守 (イルス), 漕軍 (チョグン), 水軍, 烽軍 (ボングン), 駅保 (ヨクボ),

八般私賤に は僧侶, 喪輿クン (サンヨックン), 工匠, 巫女 (ムニョ), 広大 (クァン デ, 大道芸人), 私奴婢, 妓生 (キーセン), 「白丁 (ペクチョン)」 がある。

【喪輿は葬式の棺を担ぐ人であり、工匠はほぼ李朝朝鮮の陶工である。奴婢以外の賤民を全て合計しても、恐らく総人口の1%以下でろうが、奴婢は最低でも30%程度いたのである。】

同じ 「賤民」 でも, 実際には社会的地位や差別のされ方が一様ではなかっ た。 社会的に徹底的に隔離された 「白丁」 は 「賤民」 のなかでも一番低い 身分集団だった。

「白丁」 身分は高麗時代から存在して, 一般農民をあらわす呼称であっ た。

朝鮮初期 (1392年頃) は農業政策を根幹としていて, 柳器製造や屠畜 業などを生業とする才人 (チェイン)・禾尺 (ファチョク) 集団を良民化 するため, 世宗5 (1423) 年10月に公式に 「白丁」 と改号した。 つまり, 一般農民という意味で 「白丁」 と改号したのだが, それが差別階層を表す 呼称となっていった。

このように関係諸論文では, 「白丁」 は高麗末期までは農民層を指す平 民身分だったのが朝鮮時代では差別された下層 「賤民」 に転落した変化の 過程は明らかにしたが, 「白丁」 の起源や差別された原因を適切に追究し たものは少ない。

現在の 「白丁」 身分研究で代表的な起源説は三つある。 第一に姜萬吉の 北方異民族説, 第二に衡平たちに知られている伝説を土台にしている 杜門洞七二忠臣説, 第三に朴鍾晟の楊水尺説がある。

一つ目の姜萬吉の北方異民族説は, 『朝鮮王朝実録』 の記録のなかで 「才人・禾尺はみな異類」, 「才白丁はみな異類」 という記録を取り上げて, 才人は 「異類」 ということを強調した。

二つ目の杜門洞七二忠臣説は, 旧 「白丁」 出身者が主張しており, 「白 丁」 の先祖たちは高潔な存在・身分であることを強調している。

三つ目の楊水尺説を主張している朴鍾晟は,
集団としての最下層の起源は, 楊水尺にある」 と論じている。

つまり, 才人・禾尺が農民とは違って柳 器業または屠畜業に従事していたため, 一般百姓たちは彼らを賤しいとし, 「別種」 また 「異類」 とみなしていたので, 兵曹がその才人・禾尺を 「白 丁」 と呼ぼうと提議し, それを王が許可して 「白丁」 という名称で呼ばれ るようになったことがわかる。

しかし, 一般平民たちは彼らと同一視されるのを拒否し, 彼らを 「新白 丁」 と呼び, 差別した。 その結果, 『世宗実録』 巻120, 30 (1448) 年4月 9日の条には 「甲辰の (1424年), 改めて新白丁を號す」 とあり, 世宗 6 (1424) 年には 「白丁」 は 「新白丁」 と称されるようになった。 そして 「白丁」 に対する区別をなくして平民と婚姻して, 農業に従事させること を試みたが, 守令らが同化政策を守らなかったので, 「白丁」 たちは生活 が貧しくて物を盗み, 強盗を働いた

以上のことをまとめると, 「白丁」 身分は 世宗5 (1423) 年から 「新白丁」 と改号される同王6 (1424) 年頃に成立 し, 朝鮮時代に差別される身分となったと考える。

第3章では, 「白丁」 に強制的に課せられた役務・負担を検討した。 「白 丁」 身分に課せられた役務・負担は, ①警備及び軍事動員, ②狩りのとき の動員, ③柳器などの上納があった。

記録にみられる差別の原因は, 「白丁」 が柳器製造や 屠畜業・皮革業などを生業に従事していたからであった。 そして差別を支 えた差別観念は賤視観念であることが判明した。