遺伝的浮動

p33
遺伝的多型が生じる原因は、根本は突然変異であるが、その後の変化にはいろいろな要素がる。その中でも、中立進化を促すものとして重要なのが「遺伝的浮動」である。これは集団の中で、生物の個体数が有限であるため、対立遺伝子頻度が機会的に変動する現象である。一定の強度で働く自然淘汰による遺伝子頻度の定方向的・決定論的な変化と対比される。

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p35
一つの対立遺伝子 i の頻度 Fi の変化に注目してみよう。この過程は数学的には、二項分布で表すことができる。 略 集団の沖差は次世代でも変化しないと仮定すると、 略 確率 Rp(j)     j=2NFiの時最も高くなるが、略

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遺伝的浮動は、コンピューターで疑似乱数を発生させても模倣することができる

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遺伝的浮動の効果を含めた対立遺伝子頻度の変化は、色々な数学的手法で記述することができるが、広範囲でよい近似を与えることができるのは、拡散方程式である。木村資生は、 略

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自然淘汰

自然淘汰のモデル化

A0が当初の対立遺伝子(英語では、wild typeと呼ばれることが多いそうだ)
A1が突然変異によって生じた対立遺伝子

P40
二倍体生物の場合には、優性と劣性の問題が生じる。

Wが、適応度
sは、淘汰係数(selection coefficient)
hは、優性・劣性を示す係数

現世代の対立遺伝子頻度P1は、次世代では以下の頻度P1'になることが期待される

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sは淘汰係数
Nは個体数
Fp(s,N)は、集団中で最終に固定する確率。
=突然変異を起こした1個の遺伝子が淘汰されずに集団内で生き残り、固定してしまう確率

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P43
負の自然淘汰

突然変異が生じると、そのゲノム中の位置によっては、その突然変異を持つ個体の生存に有害な場合がある

このような有害突然変異は、有害の程度にもよるが、たいていの場合、集団中から消えていく運命にある。 略 有害突然変異が集団から除かれる過程を負の淘汰(negative selection)

P45
負の淘汰が弱い場合、偶然の変動の方が強く働き、中立進化と似た振る舞いをする

(要するに、淘汰係数sがマイナス値の場合のことであり、個体数が50程度の非常に少ない場合には、有害変異は生き残る可能性があるが、個体数が増えるにつれて、その確率は小さくなる趣旨)

同義置換と非同義置換

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P51
64個のコドンが並んでいる遺伝暗号表(表3)を見てみよう

コドンの一部が塩基置換によって別のコドンに変化しても対応するアミノ酸が変わらない場合がかなりあることがすぐわかる。例えば、セリンに対応するコドンUCUの第3位置のUがCに変わっても新しいコドンUCCはやはりセリンに対応する。このような塩基置換を「同義置換」と呼び、それに対し対応するアミノ酸も変化する塩基置換を非同義置換と呼ぶ。アミノ酸をコードしている塩基配列には、その他に週コドンに変化する場合(ナンセンス突然変異)もあるが、これは大部分の場合まともなたんぱく質ができす、強い負の淘汰を受ける可能性が高いので、ここでは無視していいだろう。
タンパク質分子は、生体の内外で多種多様な機能を持っているので、そのアミノ酸配列を変化させる非同義置換タイプの突然変異が生ずると、機能が変化する可能性がある。大部分の場合、その変化は機能を弱めたり失ったりするので、負の自然淘汰にさらされることになる。一方、同義置換タイプの突然変異は、塩基こそ変化するものの、それがコードしているタンパク質には、何らの変化もない

すると同義置換はほとんどすべてが中立進化の結果のであり、一方。非同義置換は負の淘汰によってかなりの突然変異が失われると想定される。勿論中立進化の場合にも多数の突然変異が失われるが、ここでは相対的な話である。するとたったこれだけの生物学的知識を元に、中立進化論は、以下の予言を導くのである。:同義置換の進化速度は突然変異率にほぼ等しく、非同義置換の進化速度は、同義置換よりも遅い
                   
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