人類学の63の大疑問
日本人類学会教育普及委員会監修

人類学ではなく、事実上は遺伝学の内容のみメモしたので第一分類を遺伝学著作に分類しておく。斎藤教授、篠田教授等錚々たるメンバーが執筆に加わっている


p5
チベット人の秘密はEPAS1遺伝子
アンデス山脈で暮らす人たちは
赤血球の数やヘモグラビン量を多くして高知環境に適応していることが知られています
EPAS1遺伝子に変異を持つチベット人は、低酸素状態に陥ると、変異を持たない人に比べてヘモグラビン量が少ないことが明らかになりました

上の記述根拠は、下記論文であり、冒頭の要約をメモしたが、カバレッジ率が18×と低い
Sequencing of 50 Human Exomes Reveals Adaptation to High Altitude

Residents of the Tibetan Plateau show heritable adaptations to extreme altitude. We sequenced 50 exomes of ethnic Tibetans, encompassing coding sequences of 92% of human genes, with an average coverage of 18× per individual. Genes showing population-specific allele frequency changes, which represent strong candidates for altitude adaptation, were identified. The strongest signal of natural selection came from endothelial Per-Arnt-Sim (PAS) domain protein 1 (EPAS1), a transcription factor involved in response to hypoxia. One single-nucleotide polymorphism (SNP) at EPAS1 shows a 78% frequency difference between Tibetan and Han samples, representing the fastest allele frequency change observed at any human gene to date. This SNP’s association with erythrocyte abundance supports the role of EPAS1 in adaptation to hypoxia. Thus, a population genomic survey has revealed a functionally important locus in genetic adaptation to high altitude.

p42
乳糖耐性の遺伝子
日本では10%ほどです

この記述の根拠は、下記のAndrew Curryというフリーランサーによるネイチャー掲載記事、図も記事から。記事そのものは、合計9の論文をまとめたものに過ぎない。どういうわけか、日本人には乳糖耐性を有する者が多いが、合計9の論文の筆頭執筆者に日本人名は見当たらない。私は乳糖耐性を多分有している。関係ないがY染色体ハプログループは確実にD1bであり、耳垢も湿っている。

The milk revolution


2021-08-05

上の図で、中国山東半島附近と中国南部・東南アジアのみが乳糖耐性ゼロであるのが注目される。
以前に、中国の文献のみに依拠して、古代朝鮮半島の穢族の起源は中国南部であると自信たっぷりな論文の日本語訳を読んだのが印象的であるが、少なくとも合致する

【この本の著者らが、FDA論文を精読すればどう思うのであろうか?私が当初思ったように、何かの間違いでは?と感ずることであろう!しかし、韓国人どもの遺伝学者がサンプル数を50名に増やしても同じ結果であった。まさしく、人類史上稀に見る劣悪遺伝子集団又は朝鮮半島という地理的に非常に孤立し、かつ、李朝朝鮮500年の完全鎖国という歴史経緯が生み出した非常に小さい確率でしかありえない精神面でのモンスター遺伝子集団である。下記の記述内容は正確ではないが、一般向けでは概ねは正しい。表現が分かり易いのが利点であり、詳細にメモするべき内容が多い良書である。一般向けに、日本人・中国人よりも遥かに強い自然選択圧が朝鮮人にはかかっていると表現すれば、わかりやすいのであろうか?非同義変異が多いという専門用語を使用せずに済む】

p68
塩基配列から分かる自然選択圧の有無
【コドン表の①第一塩基の置換は指定するアミノ酸が変わる場合が多い②第二塩基が変化すると必ず指定するアミノ酸は変わる③第三塩基が変化しても指定されるアミノ酸は同じである旨記述した後】

このことから、あるコドンの塩基配列を個体間で比較したとき、第一や第二の塩基の多様性は低く、第三塩基の多様性が高いと考えられます。なぜなら、突然変異によって第一や第二の塩基が変わった場合、そのコドンが指定するアミノ酸が変わってしまうことが多いので、様々な不都合が起こり、長い目で見た時それをもった個体は生存や繁殖で不利になる可能性が高いからです。結果的にそのような突然変異の多くは自然選択によって集団中から取り除かれることになるのです。一方、第三塩基に突然変異が起きても、個体の生存への悪影響は少ないでしょうから自然選択を受けずに集団中に蓄積していきます。以上を整理すると、遺伝子の塩基配列の多様性から自然選択圧の有無を推測できます。もし、第一や第二塩基の多様性が高いコドンがあったとしたら、アミノ酸を変えるような突然変異が起きても淘汰されなかったということです。この場合、そのコドンの塩基の突然変異には選択があまりかかっていない、「選択圧が緩んだ」状態である可能性が考えられます

苦味受容体に関する遺伝子の多様性
苦みを感じることは、毒物に気づくという点において重要な役割を果たしています。
人は味覚以外にも調理などによって独から身を守るすべを獲得しました。そのため、苦味受容体の本来の役目(毒物の検出)が損なわれたとしても、生存の有利不利に大きく影響しなかった可能性があります。その結果、自然選択圧が緩んで、第一や第二塩基の多様性が高くなったという仮説が2004年に発表されました

p130
遺伝子に残された自然選択の証拠
突然変異には、タンパク質の機能を変えるもの(非同義変異)と変えないもの(同義変異)があります。非同義変異はたんぱく質の機能に影響を与える分、同義変異よりも自然選択の影響を強く受けます。非同義変異と同義変異は、配偶子形成の過程で生じる確率は同程度ですが、自然選択を受ける確率が違うので、集団内での受け継がれやすさに差が生じます。このことから、集団内で非同義変異と同義変異の数が著しく異なる遺伝子や、集団間で非同義変異と同義変異の比率が異なる遺伝子は、自然選択のを受けた可能性が高いのです
【MC1R遺伝子に非同義変異が生ずるとメラニン生成が滞り肌の色が白くなる旨記述した後】
複数の集団についてMC1R遺伝子の同義変異及び非同義変異の数が調べられました。肌の色が暗いアフリカの集団では、非同義変異がほとんど見つかりませんでしたが、同義変異は多く見つかりました。一方。肌の色が明るいヨーロッパや東アジアの集団では、同義変異も非同義変異もたくさん見つかりました。アフリカの集団では、MC1Rの非同義変異は肌の色を明るくするので、個体の生存に不利に働きます。一方、同義変異は肌の色にほとんど影響がないので、有利でも不利でもありません。そのため、同義変異のみがアフリカの集団内に残ったのです。

記述根拠となったのは下記論文
Evidence for Variable Selective Pressures at MC1R

p146
高い遺伝的多様性を長期にわたって維持するには、たくさんの個体数が必要となるのです。この関係を逆手にとって
【生物集団が保持する】遺伝的多様性から、「それを維持するに必要だった個体数」を割り出すことができます
「有効集団サイズ」と言います
ヒトの場合、有効集団サイズは時代によって異なりますが、平均的にはおよそ10,000程度だったと推定されています。一方、チンパンジーの有効集団サイズは20,000程度と見積もられています

記述根拠は下記の論文

Inferring human population size and separation history from multiple genome sequences